幼い頃に両親に先立たれた吉乃は養父母の元で育てられたが、五歳から十七歳になるまでの十二年間、それは酷い扱いを受けてきた。


『ああ、嫌だ。その恐ろしい目でこっちを見ないでちょうだい!』

『本当に気味が悪い。瞳の色が薄紅色だなんて、帝都に住む化け物みたいだ!』


吉乃は生まれたときから瞳の色が薄紅色だったせいで、周囲からは疎まれ、ずっと敬遠されてきたのだ。

養父母が吉乃を十七歳まで育てたのも、〝適齢期〟と言われる、人の女が一番高く売れる年齢で帝都吉原に送るためだった。

(でも、人ならざる者も、人らしい(ひと)を好むと言うし……。私は、遊女に不向きな気がするけれど)

とはいえ、ここに来てしまった以上、もう後戻りはできない。

先ほど見張り役が話していた通り、一度帝都吉原に足を踏み入れた女は、簡単に外に出ることはできないのだ。