「…待ってるよ。明日も、明後日も」


---きっと私たちは、同じものを守ろうとしていた。

いつだって隣にいて手を伸ばせば届いてしまうような、そんなベランダみたいな距離。それを手元に置いておきたかった私と、壊さないように遠ざけていた颯ちゃん。

大事に、しすぎてしまったんだね、私たち。


「…ゆず様は、優しいからさ」

「…調子乗んなくそガキ」

「へへ」


ずび、と鼻をすすって、頼りなく笑う。ブサイク、なんて言うくせに颯ちゃんも同じような顔をしているんだから、お互い様だ。


「…じゃあ、また──」


左足だけに力を入れて、ゆっくりと立ち上がる。ギイとベッドが鳴く声を、私はいつかまた、聞けるのかな。


…ねえ、颯ちゃん。

私ね、あなたを好きになって後悔したことは、一秒もないんだよ。

好きになってもらえないとしても、それでも颯ちゃんを想うだけで、めちゃくちゃ幸せになるから。

きっとそれは変わらないの。私はどうしたって、颯ちゃんが愛しいの。


ねえ、颯ちゃん。

私を大事に想ってくれて、ありがとうね。


「───また、午後23時に、ベランダの上で。」


私はまた、これからも。

あなたに、片想いをする。






Fin.