目覚めてパソコンに向き合う。好調に筆を飛ばしていた続きのシーン。最初から書きたかった場面に差し掛かっている。

(ここの、主人公・塔矢が辿り着く地で、この話の第一部が終わる……。塔矢が『果て』を見つけて、それで……!)

すらすらとキーを叩き、やっぱりあの夢は現実とは関係ないのだと確信する。しかし、塔矢が『果て』を見つけてから起こすはずの行動を書こうとして、正人は指を止めた。

(え……? 塔矢は此処から新しい地へ踏み出そうとするはずなのに……。その新しい地を思い描いたときの塔矢の感情が分からない……!!)

どうしたことだろう。眠りに就くまでは確かに頭の中で把握できていた塔矢の感情が把握出来ない。途方にくれたのだろうか? 呆然としたのだろうか? 心弾んだのだろうか? 未知の地に恐れをなしたのだろうか? プロットに書いてあるキーワードを見ても、全然思いつけない。

(どうしちゃったんだろう、僕……。だって、もう此処まで書けてるのに……!!)

原稿の提出期限は朝八時。無情にも時計はその時刻を超え、正人はまた締め切りを破ってしまったのだ……。