「大丈夫です。そんなに話しづらくないですから」
「そうなんですか?」
 大丈夫と断言したのにまだ心配しているのか眉が下がっている先生を安心させようと私は「はい!」と元気よく頷いた。それから椅子から立ち上がり座っている先生の左横まで近づいてから、膝下まであったスカートを膝上までめくった。
「じゃーん!」
 クラスのムードメーカー的存在の女子がはしゃいでいる時の声を思い出しながら声を発した。先生は目を見開いて「なっ!」と声を上げたけど構わず続ける。
「今年初めてタイツを履きました!」 
「め……、めくる必要ありません。めくんなくてもタイツを履いてることぐらい分かりますから」
 先生は腕を組んで顔を背けながら言う。そんなに見たくないのかと正直傷ついたがそれよりも人の気も知らないでとムカついた。
「ちょっと、せっかく履いてきたんですからちゃんと見てくださいよ! 膝が隠れてると見えにくいかなと思って少しめくっただけなのに、なんで……。それに、本当は履くとかゆくなるからタイツ嫌いなんですけど先生のために頑張って履いてきたんです。だから感想を教えてください。……どうですか? 似合ってますか?」
「あの、大事な話というのは……?」
 怪訝そうな顔で尋ねてきた先生に私は迷いなく答える。
「これが大事な話です」
「……えぇ?」
「えぇ? じゃなくて、私の友達はみんな、『似合ってる』とか『足細く見える』とかめちゃくちゃ褒めてくれましたよ。先生はどう思いますか? 気を遣って似合ってるって言われても嬉しくないので正直に答えてください」
 私が真剣に頼むと、「分かりました」と先生も真剣な顔で頷いて遠慮がちにちらりと見てきた。一度俯いた後に私の顔をまっすぐ見据える。