「どういたしまして」
 先生はぶっきらぼうに返したけど多分これは怒っているのではなく照れている。
「俺も真希には……感謝してもし切れないぐらい感謝している」
「そんな……、私は薫梨さんみたいにはなれなかった。先生にしてもらってばかりで何もできなかった」
 釘本くんは謝ったらしいけど注意の仕方が正しかったのかって訊かれたら分からないし、蓮歌は悪い人っていう誤解は解けたみたいだけど優しいって何度言っても信じてくれなかった。そして後輩女子は、暴言の数々を撤回してもらうことすらできなかった。
「ちょっと待て。注意してくれたこと忘れたのか? ……俺は嫌われていて、悪意ある悪口が聞こえる度に密かに傷ついてた。だから十一月三十日の朝、真希が釘本にビシッと注意してくれて本当に救われた」