「背中、さすってくれてありがとうございました。魔法の手みたいでした。先生のお陰で咳止まった」
「大袈裟だなぁ。普通の手だし俺が咳を止めたわけじゃない」
「ううん魔法の手です。なんか……お父さんには申し訳ないけど先生がさすってくれた方が不思議と安心したから」
私は壁に背を向けてそのままもたれかかるようにして立つとおもむろに口を開いた。
「好きです」
私に合わせてか、同じようにして左隣に立った先生の口から「は?」という声が漏れた。私がもう一度告白すると先生は重いため息を漏らして、しばらく黙り込んでいたけどその顔には勘弁してくれと書いてある。
「……そういえば聞いてなかったな」
ため息混じりに呟く先生に「何をですか?」と私は訊く。
「俺を……好きになった理由」
「ああ……。中二の九月に廊下ですれ違った時に、先生がよく頑張ってますねって褒めてくれたからです。宿題も欠かさず出してるしテストの訂正もいつも丁寧だし読書感想文も素晴らしかった。実力テストの点数は後三点で学年一位だったのに惜しかったですね。でもコツコツ頑張っている人は必ずぐんぐん伸びるから大丈夫だと思いますって」
先生は言いづらそうに答えたが私はすらすらと答えた。毎晩思い出してはにやにやしているのだから覚えていて当然だ。
「えっ……。それだけか?」
予想外の言葉が返ってきて、
「好きになるきっかけって意外と単純なんですよ」
むっとして言い返したその時、唇の端が切れて痛みが走った。リップクリームを塗ってくればよかったと後悔しながら続けた。
「私が惚れやすいだけなのかもしれないけど」
「大袈裟だなぁ。普通の手だし俺が咳を止めたわけじゃない」
「ううん魔法の手です。なんか……お父さんには申し訳ないけど先生がさすってくれた方が不思議と安心したから」
私は壁に背を向けてそのままもたれかかるようにして立つとおもむろに口を開いた。
「好きです」
私に合わせてか、同じようにして左隣に立った先生の口から「は?」という声が漏れた。私がもう一度告白すると先生は重いため息を漏らして、しばらく黙り込んでいたけどその顔には勘弁してくれと書いてある。
「……そういえば聞いてなかったな」
ため息混じりに呟く先生に「何をですか?」と私は訊く。
「俺を……好きになった理由」
「ああ……。中二の九月に廊下ですれ違った時に、先生がよく頑張ってますねって褒めてくれたからです。宿題も欠かさず出してるしテストの訂正もいつも丁寧だし読書感想文も素晴らしかった。実力テストの点数は後三点で学年一位だったのに惜しかったですね。でもコツコツ頑張っている人は必ずぐんぐん伸びるから大丈夫だと思いますって」
先生は言いづらそうに答えたが私はすらすらと答えた。毎晩思い出してはにやにやしているのだから覚えていて当然だ。
「えっ……。それだけか?」
予想外の言葉が返ってきて、
「好きになるきっかけって意外と単純なんですよ」
むっとして言い返したその時、唇の端が切れて痛みが走った。リップクリームを塗ってくればよかったと後悔しながら続けた。
「私が惚れやすいだけなのかもしれないけど」