「花咲さん、改めてよろしくね」


 少しだけどんよりとしてしまったかもしれない空気。

 それを振り払うように。
 できるだけ気持ちを切り替えて花咲さんにそう言った。


「……加恋」


「え……?」


「『加恋』って呼んで……
 ねっ、優くん」


『優くん』……。


 そう呼ばれて。
 僕はドキドキした。

 それと同時進行で。
 照れて顔が熱くなってきた。

 でも。
 それよりも。
 嬉しいという気持ちが。
 それらよりも勝っていた。


 僕も花咲さんのことを下の名前で呼びたい。

 呼び方が全てではないけれど。
 そう呼ぶことで。
 もっと仲良くなれる気がする。

 だから。


「……うん……
 加恋……ちゃん……」


 僕も『加恋ちゃん』と呼んだ。


 そう呼んだとき。
 そうなるだろうとは思っていた。
 その通り。
 やっぱり照れてしまった。

 そして、さらにドキドキも増した。


「ありがとう、優くん」


 加恋ちゃんの笑顔。

 僕には、まぶし過ぎるくらい。

 だけど、その笑顔は僕を元気にしてくれる。



『来年の今頃は、ここにはいない』


 やっぱり、その言葉は引っかかっているけれど。
 今は加恋ちゃんと一緒に一つでもたくさんの思い出をつくろうと思った。


 もうこれ以上、入りきらないと思えるくらいのたくさんの思い出を加恋ちゃんと一緒につくる、僕は強く決意した。