誰かが僕の名前を呼んだ気がした。


 今……。

 今……『優くん』……って……。


 僕は慌てて後ろを振り返った。


 でもそこには誰もいない。

 あるのは一輪の花やたくさんの草花たち。


 ……気のせい……かな……。

 そう思い、一輪の花やたくさんの草花たちに、もう一度「じゃあ、また明日ね」と言って、また歩き出そうとしたとき……。



 ~♪~ ~♪♪~ ~♪~ ~♪♪~ ~♪~ ~♪♪~ ~♪~



 ……え……?


 ……なんで……。

 なんで今、僕が歌っていた歌が聴こえてくるの……?


 僕は、また慌てて後ろを振り返った。

 でも、やっぱり一輪の花やたくさんの草花たちが存在するだけ。


 ……これは……。

 これは……幻聴……?


 ……でも……きれいな歌声……。

 透き通ったきれいな……。


 …………。

 ……この歌声……。

 どこかで聴いたことが……。


 ……でも……。

 いつ……?

 どこで……?


 思い出せない……。

 心の奥で何かがつかえているような……。
 そんな気が……。


 ……それに……この歌声……。


 なぜだろう……。

 なぜか……。

 なぜか切ない気持ちになる……。


 苦しくて苦しくて……。

 胸の奥が何かで締め付けられているかのように……。


 ……息が……。

 息が……できなくなりそうなくらいに……。