「神様……と言えばいいのか……
天の声のような存在の人……
と言えばいいのかな」
なに……それ……。
「私がどうしても優くんにお礼が言いたいなって願い続けていたら、
突然、空の方から声が聞こえて」
空の方から……?
「『一つだけ願いを叶える』って言ってもらったの」
一つだけ……願い……?
「でも、それには条件があって、
時期が来たら私と関わった人たちは、
全て私の記憶がなくなるって」
そんな……そんなことって……。
「それでも私は、
どうしても優くんにお礼が言いたいという気持ちが強かったから、
その条件をのんだの」
そんなの……記憶がなくなったら意味がないじゃないか‼
「だから……時期が来たときに、
私の記憶が優くんから消えたとしても……」
……うそだ……。
僕の中から……。
加恋ちゃんの記憶が……?
嫌だ……‼
そんなの嫌だ‼
加恋ちゃんの記憶がなくなるなんて……‼
「……優くん……」
加恋ちゃん‼
嫌だ‼ 嫌だ‼
加恋ちゃんの記憶がなくなるなんて‼
僕は嫌だ‼
「……優くん……」
嫌だ‼ 加恋ちゃん‼
僕の記憶から加恋ちゃんのことが消えてしまうなんて……‼
「大丈夫。私が消えた瞬間から優くんはいつも通りの生活に戻るだけ」
だからそれが嫌なんだ……‼
「これからも、たくさん楽しいことが優くんを待ってる」
加恋ちゃんのいない世界にどんな楽しいことが待っているというの……‼
「……きっと素敵な恋もする」
何を言っているの……⁉
そんなの……加恋ちゃんとじゃなきゃ嫌だ‼
「恋人ができて、いつか結婚して子供ができても……
一輪の花……私に会いに来てね」
一体何を言っているの……⁉
加恋ちゃん、なんでそんなことを言うの……⁉
加恋ちゃんが……。
加恋ちゃんがいない世界で……僕は生きていけない……‼
……おかしい……。
身体は全く動かないのに……。
涙は……。
涙は大量に溢れ出てくる……。
「泣かないで、優くん。私は死ぬわけではないから。
また花としての生活に戻るだけだから」
そんなことを言われたって……。
辛いに決まっているじゃないか……‼
加恋ちゃんは辛くないの⁉
声が出たら全部言えるのに……‼