「……あの歌……」


 ……あの歌……?


「私が転校してきた日の放課後、誰もいない教室で歌っていたあの歌……」


 ……あの歌が……?


「私が歌っていたら、優くんがちょうど教室の廊下にいて……」


 うん、僕が教室に戻ろうとしたら途中から聴こえてきたあの歌……。


「……でもね……
 実はあのとき……
 偶然じゃなかったの……」


 ……え……⁉

 偶然じゃなかった……?


「優くんが、図鑑を返しに図書室に行ったのは知っていたの。
 だから待っていたの」


 ……待っていた……?


「優くんが図書室から戻って来るのを」


 そうだったんだ。

 あのとき加恋ちゃんが教室にいたのは。
 わざわざ待っていてくれたから。


「優くんとお話がしたかったから。
 優くんとお友達になりたかったから」


 転校初日から。
 加恋ちゃんはそう思ってくれていたんだね。

 そう思ってくれていて。
 すごく嬉しい。


「最初は優くんと一言だけでもお話ができればいいと思っていた。
 ……だけど気持ちがそれだけではすまなくなってしまったの」


 ……加恋ちゃん……。


「優くんと接していくうちに、
 だんだんと優くんへの想いが募ってしまって……」


 僕もそうだよ。

 加恋ちゃんと接するたびに。
 加恋ちゃんへの想いが募っていっている。

 その想いが。
 全身から溢れ出そうなくらいに。


「友達として一緒にいられるだけで幸せなはずだったのに……
 それ以上の関係になってはいけなかったのに……」


 なってはいけない……?

 それは……どういう意味……?