* * *
植物園を出て。
今は秘密の場所にいる。
「今日もきれいだね」
いつものように花や草や木たちが、僕と加恋ちゃんのことをやさしく包み込むように迎え入れてくれた。
「うん、きれいだね」
加恋ちゃんの笑顔も。
いつものように天使のように可愛くて美しい。
僕は、そんな加恋ちゃんの笑顔を見ると元気が出てくる。
何も話さなくても。
加恋ちゃんが隣にいるだけで。
それだけで。
僕は充分に幸せ。
他には何もいらない。
加恋ちゃんが。
一緒にいてくれるだけで。
ずっと。
ずっとずっと一緒にいたい。
加恋ちゃんと。
十年後も二十年後も五十年後も……この命ある限りずっとずっと……。
まだ中学生だから、それを考えるのは早すぎるかもしれないけれど……。
僕は将来、加恋ちゃんと結婚したい。
そして僕と加恋ちゃんと、僕と加恋ちゃんの子供たちに囲まれて幸せに暮らしたい。
……でも……。
……でも……やっぱり、ずっとずっと引っかかっている……。
加恋ちゃんのあの言葉……。
『来年の今頃は、ここにはいない』
加恋ちゃんのあの言葉を聞いてから、すでに年は明けている。
となると、もうすこしで加恋ちゃんはこの町から……僕のもとからいなくなる……?
……嫌だ……。
嫌だよ……加恋ちゃん……。
この町から……僕のもとからいなくならないでよ……。
そう思った瞬間。
僕は加恋ちゃんのことを抱きしめていた。
「優くん……」
「…………」
「優くん……?」
「……いかないで……」
「……え……?」
「……お願いだから……ずっと僕のそばにいて」
「……優くん……」
「……嫌だよ……加恋ちゃんが僕のもとからいなくなるなんて……」
そんなの絶対に嫌だ。
「僕たちまだ中学生だから、こんなことを言うのは早すぎると思うんだけど……」
早すぎる。
本当に。
もしかしたら加恋ちゃんに引かれるかもしれない。
だけど……。