「ごめん、加恋ちゃん何だった?」
「優くんは何を飲むか決まった?」
そうだった。
僕と加恋ちゃんはメニューを見ていたんだった。
「あ……ちょっと待ってね……。
あっ、加恋ちゃんは何を飲むか決まった?」
「うん、オレンジジュースにしようかなと思って」
「そっかぁ……えっと、僕は……」
僕は慌ててメニューを見た。
……って、今までも見ていたつもりだったんだけど。
違う世界に入り込んでいたから、いつの間にかメニューを見ていなかった。
「僕、ココアにしようかな」
メニューをさらっと見て。
なんとか決めた。
注文を済ませ、僕と加恋ちゃんは窓の方を見ていた。
けれど僕は、見ている方向を加恋ちゃんに変えた。
加恋ちゃんは、とてもきれいな表情で窓の方を見ている。
そんな加恋ちゃんのことを見ながら僕はあることを訊こうと思った。
「ねぇ、加恋ちゃん」
「なぁに、優くん」
加恋ちゃんの顔が窓から僕の方に移った。
「あのさ、僕たち今年の四月から中学三年生じゃない。
それで思ったんだけど、加恋ちゃんは行きたい高校とか決めてる?」
「……え……」
「あっ、まだ決めてなかったら言わなくていいんだけど……」
「…………」
なんとなく。
なんとなく、そうなると思っていた。
その時期。
加恋ちゃんがいなくなるかもしれない、その時期に触れるような話をしたら。
加恋ちゃんがどんな表情になるのか。
案の定。
加恋ちゃんは無言になり、少し深刻そうな表情をして下を向いてしまった。
……違うんだ。
違うんだよ、加恋ちゃん。
僕は。
僕は不安なんだ。
今年の四月。
僕が中学三年生になる頃には。
加恋ちゃんは……。
そう思うと……。