「優くん、ありがとう。こんなにも素敵なところに連れてきてくれて」


「こちらこそありがとう、この場所に一緒に来てくれて」


「優くん……」


 加恋ちゃんは向日葵のような笑顔を見せた。


 僕はそんな加恋ちゃんの笑顔に見惚れていた。


「優くん、風が気持ちいい」


 加恋ちゃんはそう言うと、自然が広がるその場所を歩き出した。


 一歩また一歩、淡い水色のワンピースをやさしく揺らしながら加恋ちゃんはその周りを歩いた。


 加恋ちゃんが歩くその姿は美しい花のようだった。

 まるで美しい絵からそのまま出てきたような。


 僕はそんな加恋ちゃんのことを目で追った。


 …………。


 美しい自然が広がる空間を歩いている加恋ちゃんのことを見ていたら……。


 気付いたことがある。

 …………。

 違う。

 本当は気付いていた。

 だけど。
 もし、それに気付いたら。
 どう接すればいいのか、わからなくなってしまうと思ったから。

 だから、このままでいい。
 このままで。
 ずっと友達のままで。

 でも。
 そう思い込もうとすることも。
 もう限界みたいだ。

 僕は……。

 本当は……。

 加恋ちゃんのことが……。


 そう思った瞬間。
 僕の足は加恋ちゃんの方へ向かっていた。