『フェリッサ。君との婚約を破棄することをここに宣言する』

 卒業パーティで行われる断罪イベント。

『なぜですか、ナイチェル様。理由をお聞かせいただいても?』

 妖艶に笑うフェリッサ。

 ――違う、彼女はこんな笑い方をしない。

『フェリッサ。マリルにはたらいた悪事の数々を忘れたとは言わせないぞ』

 眉を吊り上げ、目を大きく見開いているナイチェル。

 ――違う、彼は彼女にこんな表情を見せたりはしない。

『まあ、悪事の数々? まったく心当たりはありませんわ』

 フェリッサが言うと、怯えたようなマリルが、ナイチェルの背に隠れる。

『貴様、この期に及んで。しらを切るつもりか』

 ――違う、違う。
 ――違う、違う。

『フェリッサ・スマイス。よって貴様は国外追放だ――。命を奪われなかっただけありがたいと思え』

 ――違う、違う。
 ――違う、違う。