ロランドがフェリッサを気になるようになったのは、中等部に入学した頃。図書室で一人、奥の机で本を読んでいる彼女の姿が印象的だった。そんな彼女に会いたいがために、毎日図書室へ足を運ぶようになり、あまり好きではない読書が好きになった。

「本は心の栄養ですもの」

 本を開くたびに、彼女のその声が聞こえるような気がしたから。

 それからすぐだったと思う。彼女があのナイチェルと婚約した、という話を聞いたのは。家柄的にも、容姿的にも、あのナイチェルに釣り合うような女性は彼女しかいないだろう。だから、納得はできた。だけど、自分の心の中は、ざわざわと風が吹いていた。
 その気持ちをなんと呼ぶのか、ロランドにはわからなかった。
 だけどフェリッサが幸せであれば、それでいいと思っていた。
 傍から見ても、フェリッサとナイチェルはお似合いだし、お互いがお互いを大事に想っていることが伝わってくる。
 将来、彼等に仕える身となるロランドにとって、これほど喜ばしいことはないだろう。

 そう、自分に言い聞かす。