そこで再びロランドは笑みを漏らす。
「ナイチェル様。会計学では明日までの宿題が出ておりますからね。しっかりとご自分で解いてくださいね」

「わかってる」
　ナイチェルはちょっとだけロランドに向かって意地になって答えると。
「フェリッサ、勉強は終わったのか？」
　と、婚約者に声をかける。

「はい」

「今日は王太子妃教育も中止になっただろう？」

「はい」

「だったら、私に付き合え」

「え、と。はい、喜んで」

「フェリッサ」
　ロランドが彼女の名を呼んだ。
「ナイチェル様が会計学の宿題を忘れないように、しっかりと頼む」

「おい、ロランド」
　ナイチェルは友の名を呼んだ。
「私だって宿題くらいは一人でできるぞ」

「できるできない、の話ではありません。忘れるか忘れないかの話です。このままですと、ナイチェル様が浮かれて宿題を忘れる可能性が高いため、フェリッサにお願いをしただけです」

「うぬぬぬ」

　図星。

　これから二人はデートをするのだろう。家同士が決めた婚約者同士だけれど、仲は悪くない。むしろ、いい。
　それは、妬けるくらいに。