優しくフェリッサを見つめるロランドを、マリルも優しく見上げていた。
 マリルには絶対にこのロランドに気付かれてはならない秘密があった。
 それは彼女がこの世界でこの卒業パーティに出席するのは、五度目であるということ。つまりマリルとしての人生を五回、繰り返しているということ。

 一度目はナイチェルルートだった。彼と結婚して、王太子妃から王妃となったはいいが、とにかく公務が忙しすぎた。そのうち公務に追われるようになり、ナイチェルとはすれ違い、互いに愛人を作るようになった。それを指摘したところ、ナイチェルが激怒し、不敬罪とかなんとかだと騒がれる中、ぷすっと刺されて人生を終えた。まだ、年は三十に届かない時だったと思う。

 二度目はジュリアスルート。ジュリアスと結ばれたのは良いのだが、彼は気に食わないことがあると、すぐに手を出す人間だった。彼と結婚後、彼に怯える暮らしが待っている。

 三度目はパトリックルート。だが、彼が興味をもっていたのはマリルの光の精霊のみ。マリル自身はどうでもよかったらしい。それも彼と結婚してから気付いた。そんな暮らしが幸せなわけが無い。

 四度目はアーサーと結ばれた。アーサーは気弱い男。司祭になってもその気弱さはかわらず。ブライトクロイツ教の信者に騙され、その地位を他の者に乗っ取られ、破門となる。それに巻き込まれたマリルは、信者にドスっと刺されて生涯を閉じる。このときもまだ、年は三十に届いていない。