ロランドたちは学園の卒業を迎える。卒業と言えば卒業パーティ。婚約者のいる者は、婚約者をエスコートする、もしくは婚約者にエスコートされる。そして卒業パーティと言えば、断罪イベントがつきものではあるのだが、今回のパーティにそれは無かった。
 ロランドは卒業生代表として、学園生活における感謝と、そしてこれから迎える未来に向けての抱負を語った。それが終わると、ナイチェルが乾杯の音頭を取る。生徒による生徒のためのパーティ。
 カチンと、グラスが高らかに鳴る。パーティは始まった。

 ロランドは目を細めて隣のマリルを見つめると、その細い身体の彼女をそっと抱き寄せた。同じように、向こうではナイチェルがフェリッサを抱き寄せている。ロランドにとっては、見たかったような見たくなかったようなその光景。

 きっとこれからも、フェリッサはナイチェルの隣で幸せに笑って暮らしていくのだろう。それがロランドの望んでいたこと。望む未来。
 もしフェリッサに対するこの気持ちを愛と呼ぶのであれば、それは彼女の幸せを願うだけだ。それを手に入れるために、自分の気持ちを犠牲にする必要があるのであれば、喜んで犠牲にする。

 だけど、彼女の笑顔を見ることだけは許してほしい、と思う。