あのとき。例のジュリアスルートの植木鉢イベント(命名ロランド)が起こった時。
 本来彼女を助けるべきジュリアスは何もしなかった。その代わり、ロランドが魔法を使ってその植木鉢の軌道を変えることで、彼女への直撃を避けた。
 あの後、ジュリアスはマリルが狙われているのではないかと口にした。それはきっと彼女の精霊に嫉妬したジョニーとその仲間たちあたりが犯人ではないか、と。あの怪しい人影は彼らでは無いのか、と。
 だから、もし彼女を守りたいのであれば、その守れるような身分というものが必要なのではないか、と。
 その身分がロランドの婚約者であった、とジュリアスは思っているらしい。

「そうか。打算的なお前のことだから、少し、心配しただけだ。その、お前にとってもマリル嬢にとっても、望んでいない結果になることだけは避けたいと思ったからな」

 ジュリアスは鋭い。ロランドは自分が打算的であるとは思っている。なぜなら、ここでマリルを選んだのは、フェリッサを守るためだから。

「いらぬ心配だな。俺は、マリル嬢と温かな家庭を作りたいと思っている」

「そうか」
 そこでジュリアスは小さく呟く。
「そう思える相手と出会えたということは、少し羨ましい気がしないでもない」
 そう言うジュリアスも婚約者がいるが、親が決めた相手であると聞いている。その娘を彼が好いているのかどうかなんて、ロランドは知らない。
 だが、きっと、そうではないのだろう。ロランドに対してそのようなことを言った、ということは。