「……君だ」

「え?」
 マリルにはロランドが言った意味がわからなかった。
「ロランド様?」

「俺が気になっている女性は、マリル嬢、君だ」

 マリルの表情が固まった。目は大きく開かれ、口は横に一の字に閉じられ。一瞬、呼吸が止まったのではないか、と思った。だが、鼻が大きく膨らんだのは、そこで息をしているからだろう。

「すまない、突然こんなことを言って」

 マリルは首を横に振った。

「驚かせてしまったな」

 それにも首を横に振る。

「マリル嬢、その、何か言ってくれないだろうか。嫌ならはっきりと断ってもらった方が、俺も諦めがつく」

 また首を横に振る。

「マリル嬢?」

 マリルは首を横に振りながら答えた。

「すいません。嬉しすぎて、夢か現実かがわかりません」

「これを夢だと思われたら、俺の今の行動は無意味になってしまう。だから、どうかこの現実を受け入れて欲しい」

 そこでマリルは頷いた。