二人は裏庭に来ていた。ここはマリルがハンカチを落とした場所。

「悪いね。あの、図書室の独特の空気が好きではないんだ」
 裏庭にはいくつかのベンチが点在している。天気の良い日は、ここでお昼を食べる生徒もいるらしい。

「ロランド様にも苦手なものがあるのですね」
 マリルは笑って答えた。
「それで、私に話したいことってなんですか?」

 マリルはクラスの中でも浮いている存在であることを自覚していた。それは自分の立場と契約した精霊のせい。もしかしたら、それを咎められるのではないかとも思っていた。だから、少し身構える。

「ああ、うん。そうだな」
 なぜかロランドの歯切れが悪い。
 ん、んん。と、咳払いをしているのは喉に何かが引っかかっているのか。

「俺にもとうとう見合いの話がくるようになって」

「そうなんですか、おめでとうございます」
 という言葉が適切な言葉であるかがわからなかったが、マリルの口から告いで出たのはそれだった。

「うん、まあ。それで。気になる女性がいるという話をしたら、家に連れてこいという話になった」

「まあ。ロランド様のお眼鏡に適うような女性は、幸せですね。もしかしてそれを私におっしゃったということは、私の知っている方でしょうか。私に協力できることがあれば、喜んで協力させてもらいます」