「もし、俺が選んだ人物が、魔導士団の関係者だったらどうするんですか?」

「ん?」
 父親は楽しそうに眉をピクリと動かした。
「それは、お前の腕の見せ所だと思っている」

 この国は今、魔導士団と騎士団の人間がやや分裂している。目的は同じであるのに、手段が違うということで。
 宰相である父親は、そのどちらにも所属しない文官。淡々と与えられた業務をこなすだけ。仕事中の父親は、無表情でそれらをこなすらしい。感情が無いのではないか、とも言われているため、陰でつけられた二つ名は氷の宰相。

「でしたら、少し気になる女性がいるのですが。その方も候補にいれていただいでもよろしいでしょうか」

「ほう、お前が気になる女性というのは、私も気になるな」
 父親は楽しそうに笑った。
「どこの娘だ?」

「学園で同じクラスになった女性です」

「クラス一の生徒なら、何も問題はないだろう」

「ただ、身分が」

 そこでロランドが言葉を止めた。それで父は全てを察したのだろう。

「身分が低いにも関わらず、その娘を選んだ理由は何だ?」

「光の精霊の契約者なのです」

「ほう」
 父親は身を乗り出してきたが、食事中であったためすぐに姿勢を正した。
「面白いな。身分は何とでもなるし、教育さえ受ければ知識も何とかなる。だが、何とかならないのは精霊との契約だ」
 父親は嬉しそうにスープをすくっていた。
「今度、うちに連れてきなさい。必要であれば、その娘の教育についてもこちらで準備する」

 間違いなく、この父親はこの状況を楽しんでいる。