マリルは驚いて後ろを振り返った。先ほどまで自分が歩いていた場所に、植木鉢が落ちている。その落ちた先である二階を見上げると、人影が見えた。だがそれが誰であるかまではわからなかった。

「マリル嬢、怪我はないか」
 マリルには、ちょうど真ん前からこちらに向かって走ってくるロランドの姿が見えた。その少し後方にいるのは、あのジュリアス。
「あ、はい」

 上から植木鉢が落ちてきたことにも驚いたが、彼が息を切らせながらこちらに向かって走ってきていることも驚いた。

「すまない。間に合わなかったから、それの軌道を変えることしかできなかった」

「え、と」
 とマリルが何かを言おうとしたところ、ロランドは彼女の背に手を伸ばた。そして、ぐっと抱きしめる。

「怖い思いをさせてすまなかった」

「ロランド様。あの、私はなんともありませんので。その、大丈夫です」

「ああ、すまない。つい」

 つい、ってどういう意味だろうと、マリルは心の中で考える。

「おい、ロランド」
 遅れてジュリアスが来た。

「今のは何だ? あきらかに――」
 とジュリアスがそこまでいいかけたとき、シッとロランドが制した。
 マリルが怯えるから、ということだろう。
「後で」とジュリアスにだけ聞こえるようにロランドは言う。

 そしてこれは、ジュリアスルートのイベントだ。