ある日の昼休み。
 ロランドはジュリアスと並んで歩いていた。昼食を終え、次の授業のために建物を移動しているところだった。天気も良いから散歩も兼ねて。
 風は穏やかに吹いていて、空は透き通るような青さである。この空はフェリッサを思う心に似ているかもしれない、とロランドは少し感傷に浸っていた。
 触りたいのに触れることができない。届きそうだと思って手を伸ばしても、届くことの無い青い空。
 だから、そうやって少し空を見上げながら歩いていたから気付いたのだ。
 二階の窓が少し光に反射していることに。何だろう、と目を凝らしてみると少し不自然なところがある。隣のジュリアスもその不自然さに気付いたらしい。
 あまりにも不自然であるため、視線をそれらの下や横にも向けてみた。向こう側からマリルが歩いてきている。大事そうに本を抱えているのは、恐らく図書室から本を借りたからだろう。どうしても読みたい本があったから、取り寄せてもらうことをお願いした、と、そんなことを言っていたような気がする。

 不自然は、さらに不自然になった。
「おい」
 思わず口を開いたのはジュリアス。恐らく、ロランドに何かを伝えたかったのだろう。
 なぜなら、その光が重力に負けて落ちてくるのだから。

 もしかしてこれは――?

 ロランドの脳が活発に動いた。瞬間的に何が起こるかを予測して、それの解決方法を導き出した。今から彼女の元にまで走っても間に合わない。ここで今できることを考える。

 ガシャン。