光の精霊と契約をしたマリルは、それ以降、クラス一の生徒とも話をすることが増えた。ロランドは必要なときには彼女と話はするが、特段、用事が無ければ彼の方から声をかけることはなかった。
 スクールカーストという言葉が昔の記憶にあるが、このゲームの世界にその言葉は存在していない。だけど、そういった言葉がないだけで、このクラスにもそれは存在しているのだろうと思っていた。
 このカーストのトップにいるのはもちろんナイチェルとフェリッサの二人。この二人は別格だ。次が攻略対象者の残り三人とそしてロランド。続いて、親が騎士団だったり魔導士団だったりする、それらの子。そして底辺は、商売をやっている子や庶民あがりの子。つまりのところ、四段階。クラス一は成績上位者だから、親もそれなりの人が多いのだが、数年の学園生活の中において、努力でこのクラスに入ってくる者だっている。それが、最下層。

 もちろんマリルは最下層に所属している。その彼女が光の精霊と契約をした、となれば彼女よりも上位に所属する者たちは面白くないらしい。
 マリルに突きつける冷たい視線の持ち主は、あの魔導士団の誰かの息子であるジョニーを中心としたメンバーたち。それくらいなら、かわいいものだ。
 視線だけで人を傷つけることはできないから。それを無視する心さえ持っていればよい。

 徐々に、その行為が目に余るようになってきた。あからさまな肉体的な攻撃。あれは不思議なもので、仕掛けている側は誰にも気づかれないようにやっていると思っているらしい。
 だけどロランドは知っていた。
 ジョニーが彼女とすれ違うものならば、わざと肩をぶつけたり、わざと背中を押したり。まるで幼稚園児のいたずらなようなもの。それでも彼女は気付かない振りをしていたし、彼女が気付かない振りをしているのであれば、わざわざロランドが口を出す必要も無いと思っていた。