光の魔法単独では攻撃をしかけることができない。それについては誰もが知っていることであるため、誰かの力を借りることになっていた。その誰かにと指名されたのがロランド。

「パトリックでなくていいのか?」

 自分なら間違いなくパトリックを選ぶ。

「はい。ロランド様の風の魔法が良いのです」
 多分、相性が良いはず、とマリルは続けたのだが、その言葉はロランドの耳には届いてはいない。

「もし、失敗しても俺を恨むなよ」
 鼻の先で一笑すると、ロランドは風の精霊を呼び出し、小さな竜巻を起こした。さらにマリルが光の精霊を呼び出し、その竜巻の力を増幅させる。

 バシン、と、的を綺麗に真っ二つにした。縦に真っ二つに。

「なるほど、光の魔法は攻撃魔法の力を増幅させるのか」
 パトリックが頷き、感心している。さらに口の中で何かもごもごと呟いている。恐らく、今の光魔法について考察をしているのだろう。だが、ロランドには彼が何を言っているのかはわからない。

「あの、ロランド様。ありがとうございました」

 マリルはペコリと頭を下げた。ロランドはふっと鼻で笑い。
「いや、こちらこそ。貴重な体験ができた」

「マリル嬢」
 魔法バカのパトリック。
「私の魔法にもその光魔法をかけてもらえないだろうか」

 他の生徒がざわざわとどよめく中、マリルは断れない様子だった。さらに教師からも「試してみなさい」と言われたのであれば、どうして断ることなどできるだろう。