ロランドが口にしたセリフ。それは、本来であればナイチェルが言うはずだった。彼はまるっとパクっただけにすぎない。そのナイチェルのセリフを。
 そしてマリルから返ってきたそれ。本来であればナイチェルに投げかけるべきそれだった。
 つまり、今、ロランドはナイチェルルートを攻略している、と思っていいのだろうか。

「ロランド。なんか、最近、おかしくないか?」
 そんな彼の様子に気付いたのだろうか。ジュリアスが声をかけてきた。

「そうか?」
 悟られないように、淡々と答える。感情というものを押し殺して。

「なんか、心ここに非ず、という感じがするのだが」

「気のせいだろ?」
 ロランドは笑った。だが、フェリッサの未来を考えると、こうしてはいられないという焦りが生まれてくる。
 そして、今、自分がとっている行動は正しい道なのか、ということも。

「ほら、次。マリル嬢の番だ」

 今は攻撃魔法の授業の時間だ。先日、契約した精霊たちを自由に使いこなすための授業。

「光属性の攻撃ってどうやるんだろうな。興味はあるな」

 そう。光魔法は攻撃魔法ではない。

「あの、ロランド様」
 なぜかマリルはロランドを名指しした。
「その、手伝っていただいてもよろしいでしょうか」

 はあ、俺? という意味を込めて、ロランドは右手の人差し指で自分を指した。それにマリルは頷いた。