恐らく、ロランドがナイチェルルートを奪ったものと思われる。マリルはナイチェルと特別親しくする様子はない。
 あのハンカチ事件(命名ロランド)がきっかけとなり、二人は次の日からいくつか言葉を交わすようになる。そして、精霊との契約の日に光の精霊と契約をしたマリルにナイチェルが――。
 というのが、王道ナイチェルルートなのだが。

「ロランド。どうかしたの?」

 ぼっと、立っているロランドにフェリッサが声をかけてきた。今は、例の精霊との契約時間。今、アーサーが水の精霊と契約を終えたところ。ジュリアスは火の精霊。ロランドはもちろん、風の精霊だった。
 それから、複数契約者としては王太子のナイチェルが火と土。そして、その婚約者であるフェリッサが水と風。今のところ、この二人。これからのこの国を背負っていく人物としてはふさわしい結果だった。

「うわー」
 と歓声があがったのは、パトリックが風火地水の四種の精霊と契約をしたからだ。

「さすが、パトリックね」
 フェリッサのその言葉に、ロランドも続ける。
「彼は、四種の精霊との契約のために、努力を続けていたからな。魔導士団長の息子というそれにふさわしい結果だな」
 フェリッサはそう呟くロランドを見上げた。
「あなたは、さりげなく人を褒めるのが上手だわ」
 だが、ロランドには自覚が無い。
「そうか?」
 首を傾けて、フェリッサに視線を向けた。