やはり、夢のせいだ。いや、思い出した記憶のせいだ。今の現実が夢なのか現実なのかよくわからない。授業を聞いていても、その声が右から左へと通り過ぎていく。まあ、得意な会計学の時間だから、少しくらい話を聞かなくても問題は無い。
 ぼんやりとした頭を抱えたまま、その日の授業は全て終わった。

 授業が終わった放課後という時間。この時間は嫌いではない。むしろ生徒たちは自由に動き出し、それぞれのやりたいことに精を出す。静かでありながらも、活発。
 フェリッサはこれから王太子妃教育が待っている、らしい。ナイチェルと共に肩を並べて、教室を出ていく。
 ジュリアスは騎士団の訓練に参加。となると、パトリックも魔導士団の方の訓練に参加するのだろう。団長を親に持つ、というのはなかなか大変なようだ。
 アーサーは図書室に行くと言う。彼は、放課後は決まってそこで本を読んでから帰宅する。とにかく、幅広い知識が必要とのこと。

 それに引き換えロランドは、ぶっちゃけ暇だった。剣の訓練も魔法の稽古も、そして幅広い知識も必要としない。むしろ、人を上手に扱う能力と、与えられた業務を素早く割り振ってさばく、という技量が必要。だから、彼が生徒会長でこの学園の生徒たちを取りまとめている。
 だけど今は、生徒会の仕事も閑散期。やっぱり、暇なことに変わりはない。
 だから、仕方なく。そう、仕方なく。例の裏庭へと足を運んでみることにした。うまくいけばそこにはマリルがいるだろう。いなかったら、さっさと帰ればいい。ただそれだけのこと。