「おはようございます、ロランド様」
 男四人が頭を寄せているそこに振ってきた、鳥がさえずるような細い声。ロランドは頭を上げ、その声の主を見上げた。

「ああ、おはよう。マリル嬢」

「昨日はありがとうございました」

「いや。当たり前のことをしただけだ。用はそれだけか?」

「え、いや、はい」
 今朝みた夢のせいだ。ついつい彼女に冷たい言葉を放ってしまったのは。

「すまない。今は手が離せない。この状況をみて察してくれ」
 繕うように彼女に笑顔を向けた。それを見て、彼女も笑顔を浮かべた。
 どうやら、うまく笑えたようだ。
 ジュリアスが何かを察したのか、顔をあげた。そしてマリルをジロリと睨む。彼の眼光は鋭い。それに委縮したマリルはそそくさとその場を去った。

「お前、いつの間にマリル嬢と仲良くなったんだ?」
 ジュリアスが尋ねてくる。
「仲良くはなっていない。クラスメートして、普通に接しているだけだ」

「そうか? まあ、彼女はいい噂は聞かないからな。気をつけろよ」

 これ以上、何に気をつけろ、と言うのか。

「ジュリアス、そこ間違えている。余計なことを考える暇があるなら、さっさと計算し直せよ」

 別に腹いせにそんなことを言ったわけではない。ジュリアスは本当に計算を間違えていたのだから。