王太子、騎士団長の息子、魔導士団長の息子、司祭の息子。
 そして、宰相の息子。
 いるではないか。あの四人に張り合うことができるような男が。今、目の前に。
 そう、ロランド自身。
 ナイチェルとアーサーの権力には敵わない、ジュリアスの力にも敵わない、パトリックほどの魔力も無い。だけど自分にはこの頭脳がある。戦略がある。そして何よりも、このゲームの結末を知っている。

 フェリッサを守るためであれば、なんだってやってやる。
 元々、心の奥底に仕舞い込んでおかなければならない気持ちなのだ。だけど、彼女の幸せを願うことだけは許してもらいたい。

 だからこそ、マリルを攻略する――。


 さて、それぞれの攻略対象者の分岐点というものを思い出してみよう。
 マリルは三学年に進級してから、クラス一に昇級してきた。これはゲーム開始時期と一致する。つまり、ゲームは始まったばかり、というところか。

 ナイチェルルートでは、裏庭でこっそりと魔法の練習をしていたマリルがナイチェルに見つかってしまったため、そそくさと逃げ出す。そのときに、慌てていたためかハンカチを落としてしまう、というありきたりなイベント。
 ナイチェルは一生懸命に魔法を練習していた彼女が気になり、そして丁寧に刺繍がされている彼女のハンカチが気になり――。
 というところからナイチェルルートは開通する。