「へぇー、そうだったんだ」
髪をやっと整えて、帽子を被り直す。
そこへ、スカイとフォルテがパタパタと駆け寄ってくる。
「いやー、辛かったよ。いろんな意味で」
相変わらず爽やかに話すスカイの口調からは、あまり辛かったような気配は感じとれないが、彼がそう言うなら、そうとう厳しい戦いだったのだろう。
デュナが、張り紙をフォルテに見せている。
「うーん……何か書いてあるよね……かすれててよく読めないけど、字だよね?」
じっと紙の下を凝視するフォルテの言葉に
「フォルテは私と同じくらい精神力がありそうね」
と、デュナがメガネを光らせる。
それは、嬉しい事なのだろうか、悲しい事なのだろうか。
メガネに隠れてしまって、デュナの表情は見ることが出来ない。
「んー……? なんか書いてあるか??」
後ろから覗き込んでいたスカイが、紙を手元まで引き寄せ睨みつける。
「あんたには見えないわよ」
デュナが呆れたような声と共に、スカイの手から紙をひったくった。
紙に幾度も開いていた穴は、あの字が読めない人達の数を物語っていたのか……。
確かに、金額も良いし、場所はここザラッカだ。
「あれ、けど、それって結局、精神力の強い人じゃないと受けられないクエストだったって事で……」
つまるところ、デュナのレベルでも難しいクエストなのでは……と気付いた途端。
昨日の巨大人形の影が脳裏を過ぎった。
内容を確認しようと、デュナに近付こうとしたとき、窓口からさっきのおじさんが顔を出した。
「安心していいよ、お嬢ちゃん。仕事の内容は簡単で、危険も無い」
お嬢ちゃん……だなんて、久しぶりに言われた気がする。
なんだか気恥ずかしく思っていると、管理局のおじさんは、冒険免許とパーティー証をデュナに返しながら続ける。
「依頼人の私有地にある精神力反応の扉を、開ければいいだけだそうだ」
デュナの背後から覘いた紙には『依頼内容:鍵開け』とだけ書いてあった。
なるほど、これでは確かに、腕に自信のある精神力皆無の盗賊さん達が、場所も金額も良いこの張り紙を剥がして来るだろう。
もっと他に書き方があるだろうものを……。
おじさんは、いつのまにか眉根を寄せていた私に気付いたのか
「こちらでは内容を書き換えたり出来ないものでね」と苦笑いを返してくれた。
「さあ、早速依頼主のお屋敷に行くわよー」
デュナが、白衣の内ポケットに免許証等をしまいこむと、くるりと方向転換をした。
「また屋敷なのか……」
スカイがなんだかげんなりと返事をする。
屋敷という単語に対するイメージが、彼の中でどういう物になってしまったのかが垣間見えた気がする。
「なんでも、ザラッカで一番広いお屋敷らしいわよ」
……あんまり嬉しくないなぁ。
不安げに、足元にフォルテがまとわりついてくる。
いけないいけない。私達がこんな態度ではフォルテにまで無駄な心配をさせてしまいそうだ。
なるべく優しく、明るく声をかける。
「フォルテ、大丈夫だよ。扉の鍵を開けたらいいだけだってさ。危ないこともないからね」
「うん……」
「すぐ終わるから、そしたらまたあの置物でも見に来よっか」
「うんっ♪」
私の言葉に、顔を上げたフォルテの瞳は、既に私ではなくあの青い液体を捕らえているかのようだった。
一体、どこをそんなに気に入ったのだろうか。
確かに心癒される置物ではあったけれど……。
フォルテの態度に引きつった笑顔を浮かべていたであろう私の肩をポンとスカイが叩く。
振り返ると、デュナはもう先を歩き始めていた。
髪をやっと整えて、帽子を被り直す。
そこへ、スカイとフォルテがパタパタと駆け寄ってくる。
「いやー、辛かったよ。いろんな意味で」
相変わらず爽やかに話すスカイの口調からは、あまり辛かったような気配は感じとれないが、彼がそう言うなら、そうとう厳しい戦いだったのだろう。
デュナが、張り紙をフォルテに見せている。
「うーん……何か書いてあるよね……かすれててよく読めないけど、字だよね?」
じっと紙の下を凝視するフォルテの言葉に
「フォルテは私と同じくらい精神力がありそうね」
と、デュナがメガネを光らせる。
それは、嬉しい事なのだろうか、悲しい事なのだろうか。
メガネに隠れてしまって、デュナの表情は見ることが出来ない。
「んー……? なんか書いてあるか??」
後ろから覗き込んでいたスカイが、紙を手元まで引き寄せ睨みつける。
「あんたには見えないわよ」
デュナが呆れたような声と共に、スカイの手から紙をひったくった。
紙に幾度も開いていた穴は、あの字が読めない人達の数を物語っていたのか……。
確かに、金額も良いし、場所はここザラッカだ。
「あれ、けど、それって結局、精神力の強い人じゃないと受けられないクエストだったって事で……」
つまるところ、デュナのレベルでも難しいクエストなのでは……と気付いた途端。
昨日の巨大人形の影が脳裏を過ぎった。
内容を確認しようと、デュナに近付こうとしたとき、窓口からさっきのおじさんが顔を出した。
「安心していいよ、お嬢ちゃん。仕事の内容は簡単で、危険も無い」
お嬢ちゃん……だなんて、久しぶりに言われた気がする。
なんだか気恥ずかしく思っていると、管理局のおじさんは、冒険免許とパーティー証をデュナに返しながら続ける。
「依頼人の私有地にある精神力反応の扉を、開ければいいだけだそうだ」
デュナの背後から覘いた紙には『依頼内容:鍵開け』とだけ書いてあった。
なるほど、これでは確かに、腕に自信のある精神力皆無の盗賊さん達が、場所も金額も良いこの張り紙を剥がして来るだろう。
もっと他に書き方があるだろうものを……。
おじさんは、いつのまにか眉根を寄せていた私に気付いたのか
「こちらでは内容を書き換えたり出来ないものでね」と苦笑いを返してくれた。
「さあ、早速依頼主のお屋敷に行くわよー」
デュナが、白衣の内ポケットに免許証等をしまいこむと、くるりと方向転換をした。
「また屋敷なのか……」
スカイがなんだかげんなりと返事をする。
屋敷という単語に対するイメージが、彼の中でどういう物になってしまったのかが垣間見えた気がする。
「なんでも、ザラッカで一番広いお屋敷らしいわよ」
……あんまり嬉しくないなぁ。
不安げに、足元にフォルテがまとわりついてくる。
いけないいけない。私達がこんな態度ではフォルテにまで無駄な心配をさせてしまいそうだ。
なるべく優しく、明るく声をかける。
「フォルテ、大丈夫だよ。扉の鍵を開けたらいいだけだってさ。危ないこともないからね」
「うん……」
「すぐ終わるから、そしたらまたあの置物でも見に来よっか」
「うんっ♪」
私の言葉に、顔を上げたフォルテの瞳は、既に私ではなくあの青い液体を捕らえているかのようだった。
一体、どこをそんなに気に入ったのだろうか。
確かに心癒される置物ではあったけれど……。
フォルテの態度に引きつった笑顔を浮かべていたであろう私の肩をポンとスカイが叩く。
振り返ると、デュナはもう先を歩き始めていた。