彼女の周囲に集まっていた精霊達が、一気に部屋へ散開する。
床の上を音もなく舞う精霊達によって、辺り一面を覆いつくしていた土くれが一箇所に集まってゆく。
「――っ精神を代償に、以上の構成を実行!」
デュナが、組みかけていた構成で、みるみる人の形を成してゆく巨大な土の塊に大穴を開ける。
しかし、その穴は精霊達がすぐさま塞いだ。
「やっぱりダメね、走るわよっ!」
デュナの言葉に走り出した私達の前に、二体の人形が立ちはだかる。
大きな人形に気をとられて、見逃してしまったのがいたのか。
「お願いっ!」
反射的に、杖に溜めていた光球を飛ばす。
が、光球に肩を砕かれた人形はそのままこちらに向かってきた。
「ラズ! 下がって!」
くるりと踵を返し、フォルテを抱えるようにして走る。
そのすぐ後ろで、轟音と共に小さな雷が落ちた。
音と地揺れに涙目になってしまったフォルテの頭を撫でながら、辺りを見回す。
部屋の中央に戻されてしまった私とフォルテ。
それを助けに戻ってきたデュナも、やはり階段までまだ距離がある位置だ。
床の魔方陣からはまだちょろちょろと人形が湧き出していて、デュナがそれを潰している。
足元に落ちた瓶は、二本目だろう。
動き出した人形は、その全身を砕かなくては倒せないようだけれど、果たして自分の最大出力の光球でも、それが可能だろうか。
せめて、球体以外の形でイメージできれば良いのだろうけれど……ぶっつけ本番で試すほどの度胸はない。
そんな私達を、部屋の天井に頭が届きそうなほどになった土くれの集合体が
目も鼻も口も無いごつごつした顔で見下ろしている。
金髪の彼女を筆頭とする犯人グループは、その巨大人形の向こう側だ。
足元では、デュナが新たに砕いた人形達の破片が、次々に巨大人形の材料にされている。
「二人とも、私の傍に!」
デュナが駆け寄ってくる。その周りを水ではなく大気の精霊が飛び交っている。
結界かな?
なるべくデュナにピッタリ身を寄せるようにして、左手でフォルテを抱え込む。
「実行!」
案の定、私たち三人をぐるりと包んだ空気の膜が生成される。
ホールには、もう五体……いや、六体に増えた人形達がふらふらとこちらに向かってきている。
まだ床からは無数の頭が覗いているし、巨大な人形もその指先まで成形が進んでいた。
デュナは結界を保ったまま上階へ移動するつもりらしい。
そろそろと進む彼女から、なるべく離れないように歩く。
デュナの額には汗がにじんでいた。
おそらく、今は言葉を発することも難しいのだろう。
私の横から結界に触れてきた人形が、電撃に弾き飛ばされる。
衝撃にビクッと身をすくめたフォルテが足を止めそうになる。
「大丈夫だよ」
その背中を軽くさすって、私達はデュナの後に続く。
一瞬私を見上げて、ただコクリと頷いたフォルテの、大きな瞳にいっぱい溜まった涙が、私の恐怖心を吹き飛ばす。
この子だけは、絶対に守りぬかないといけない。
怖い目に遭わせてしまった罪悪感を、強い決意で塗りつぶして、右手のロッドに精一杯の力を集めた。
階段が目前に迫ってくる。
結界の周りを、八体の人形が囲んでいる。
吹き飛ばされた三体も、また起き上がりこちらへ向かっていた。
階段を駆け上がったとして、人形達は追ってくるのかもしれないが、
少なくとも大きな方の人形に、それは難しいだろう。
スカイはまだ眠っているだろうか。
途端、見つめていた階段が姿を消す。
大きな音と地響き。
目の前には大きな土で出来た手が、壁のようにそびえ立っていた。
床の上を音もなく舞う精霊達によって、辺り一面を覆いつくしていた土くれが一箇所に集まってゆく。
「――っ精神を代償に、以上の構成を実行!」
デュナが、組みかけていた構成で、みるみる人の形を成してゆく巨大な土の塊に大穴を開ける。
しかし、その穴は精霊達がすぐさま塞いだ。
「やっぱりダメね、走るわよっ!」
デュナの言葉に走り出した私達の前に、二体の人形が立ちはだかる。
大きな人形に気をとられて、見逃してしまったのがいたのか。
「お願いっ!」
反射的に、杖に溜めていた光球を飛ばす。
が、光球に肩を砕かれた人形はそのままこちらに向かってきた。
「ラズ! 下がって!」
くるりと踵を返し、フォルテを抱えるようにして走る。
そのすぐ後ろで、轟音と共に小さな雷が落ちた。
音と地揺れに涙目になってしまったフォルテの頭を撫でながら、辺りを見回す。
部屋の中央に戻されてしまった私とフォルテ。
それを助けに戻ってきたデュナも、やはり階段までまだ距離がある位置だ。
床の魔方陣からはまだちょろちょろと人形が湧き出していて、デュナがそれを潰している。
足元に落ちた瓶は、二本目だろう。
動き出した人形は、その全身を砕かなくては倒せないようだけれど、果たして自分の最大出力の光球でも、それが可能だろうか。
せめて、球体以外の形でイメージできれば良いのだろうけれど……ぶっつけ本番で試すほどの度胸はない。
そんな私達を、部屋の天井に頭が届きそうなほどになった土くれの集合体が
目も鼻も口も無いごつごつした顔で見下ろしている。
金髪の彼女を筆頭とする犯人グループは、その巨大人形の向こう側だ。
足元では、デュナが新たに砕いた人形達の破片が、次々に巨大人形の材料にされている。
「二人とも、私の傍に!」
デュナが駆け寄ってくる。その周りを水ではなく大気の精霊が飛び交っている。
結界かな?
なるべくデュナにピッタリ身を寄せるようにして、左手でフォルテを抱え込む。
「実行!」
案の定、私たち三人をぐるりと包んだ空気の膜が生成される。
ホールには、もう五体……いや、六体に増えた人形達がふらふらとこちらに向かってきている。
まだ床からは無数の頭が覗いているし、巨大な人形もその指先まで成形が進んでいた。
デュナは結界を保ったまま上階へ移動するつもりらしい。
そろそろと進む彼女から、なるべく離れないように歩く。
デュナの額には汗がにじんでいた。
おそらく、今は言葉を発することも難しいのだろう。
私の横から結界に触れてきた人形が、電撃に弾き飛ばされる。
衝撃にビクッと身をすくめたフォルテが足を止めそうになる。
「大丈夫だよ」
その背中を軽くさすって、私達はデュナの後に続く。
一瞬私を見上げて、ただコクリと頷いたフォルテの、大きな瞳にいっぱい溜まった涙が、私の恐怖心を吹き飛ばす。
この子だけは、絶対に守りぬかないといけない。
怖い目に遭わせてしまった罪悪感を、強い決意で塗りつぶして、右手のロッドに精一杯の力を集めた。
階段が目前に迫ってくる。
結界の周りを、八体の人形が囲んでいる。
吹き飛ばされた三体も、また起き上がりこちらへ向かっていた。
階段を駆け上がったとして、人形達は追ってくるのかもしれないが、
少なくとも大きな方の人形に、それは難しいだろう。
スカイはまだ眠っているだろうか。
途端、見つめていた階段が姿を消す。
大きな音と地響き。
目の前には大きな土で出来た手が、壁のようにそびえ立っていた。