そんな風に過ごしていたある日のお昼。加奈子は由佳と一緒にお弁当を食べていた。もう直ぐ行われる文化祭の準備のために最近では昼食時間も、部活が終わった後の時間も、皆が教室に集まって準備に勤しんでいる。その貴重なお弁当の時間に、加奈子は手早く由佳に話し掛けた。

「私さあ……、ずっと由佳に言ってないことがあったんだよね……」

ぱくりとウズラの卵とウインナーの串刺しを食べて、加奈子は言った。その言葉に由佳が加奈子の方を振り向く。

「え、なに? 大事なこと?」
「……うん。……私、梶原と付き合ってることに、なってるじゃない?」
「? うん? 一年の時からだもんね。学校中の皆が知ってるよね」
「うん、それなんだけどさ……」

言っちゃって、良いかな。でも、言わないと絶対、梶原が後悔するよね……。加奈子は腹をくくって口を開いた。

「それ、さ……。嘘なの」
「……? …………え……?」
「お互いに事情があって、付き合ってるふり、してるの……。でも、由佳には、言っておかないと、後悔するなって思ったから……」

後悔? と由佳が問うた。

「……私に、……嘘ついてたってことを? でも、事情があったんでしょ? 二人にしか分からない事情なら、私が知らなくても仕方ないし、そのまま隠してることも、出来たんじゃないの……?」

確かに事情があった。でも、今、その前提が崩れようとしている。

「うん、確かに事情があったの。でも、梶原が変わって来てるから、それなら、もう隠してる必要、無いかなって思って……」
「? ……分からないけど……。……でも、私にだけ、言う理由があるのね……?」
「……うん」
「じゃあ、私も他の誰にも言わない。秘密は、三人で守っていこうね」

にこっと、由佳が笑った。こういうところ、好きだなあ……。そして、きっと、梶原も、そう言うところに気が付いたんだろうな、と思ったら、親友を誇らしく思った。


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