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入学した時から周りが煩いと思ってた。もてはやされるように自分がかわいいんだってことは自覚してた。だって、折角高校デビューしたのに彼氏の一人も出来なかったら嫌じゃない? でもかわいいだけで付き合ってって言われるのはあんまり嬉しくない。ホントはガチな腐女子で、そこら辺の二次創作は網羅済みだ。今日だってスマホでピッシブをチェックしてから登校してきてる。だからこの趣味に理解は得られなくても、容認してくれる彼氏じゃないと駄目だと思ってた。

加奈子は中学の時、その腐女子ぶりで男子に引かれてた。引かれてた、なんてかわいいもんじゃない。ドン引きだ。同じ趣味の友達は居たけど、中三の卒業間近になってクラスメイトたちが、なんとかくんの第二ボタン欲しい、なんて言い出して、それが同好の士と思ってた腐女子友達もそうだったから、裏切られたと思った。そんなにリアルの男子が良いのか。私は絶対そうは思わない、と思ってた。

でも、いざ卒業式が終わると、カップルとは言わないけども其処ここで男子と女子が仲睦まじく喋っていて、教室から解放されてもあっちこっちにそう言う人の輪が出来てた。一直線に校門に向かったのなんて加奈子くらいだ。それは腐女子としての高い志の心とは別の所に、冷たい風穴を空けた。えっ、私、こんなにさみしい中学三年間を送って来た? そう思ってしまったほどだった。
最初が肝心。終わりよければすべてよし。そう言うではないか。そこで高校入学の前に一念発起した。高校では腐女子を隠して彼氏を作る。そして晴れやかな卒業式を迎えるのだと心に誓っていたのだ。