「……梶原……」
「ん? なに?」
「ホントに由佳に告白しなくていいの……? もう会えなくなっちゃうんだよ……?」
本当に自分でも何をお節介妬いてるんだか。それでも梶原には明日校門を出るときに晴れ晴れと笑っていて欲しいから……。だから。
「かじ……」
「言うよ」
ふと。
言葉が被った。
梶原が真剣な顔をして加奈子のことを見ていた。
その目を見て悟る。
ああ。やっと決心したんだ。梶原は悔いなく高校生活を終えることが出来るんだ。
どこか安堵の気持ちと、一抹の寂しさ。そんなものを抱えて、加奈子は頷いた。
「……大丈夫だよ……。梶原なら、きっと上手くいく」
加奈子が言うと、梶原は表情を和らげた。……まるで今の流れる空気みたい。ぬるんで、あたたかくなったそれみたい。
……梶原に、春が来る……。