生徒会は代替わりした。加奈子は梶原と表向きは恋人関係を保っていたが、以前よりぐっと会うことは少なくなった。目の前には受験がある。恋だのなんだのと、言っていられなくなったのだ。

「加奈ちゃん……」

由佳が、何故か心配そうに加奈子を見やってきた。

「なに?」
「……なんか、元気ない気がして……。梶原くんと会ってる?」

なんでそんなことを聞くのだろう。由佳には『振り』だと伝えた筈なのに。

「必要ないでしょ、今。みんな受験一色だよ」
「でも、受験が終わったら卒業だし、卒業したら、もう梶原くんと会えなくならない?」

梶原は東京の大学に行くと言っていた。加奈子は地元の大学を受験するから、進路は違う。……って、そう言うことじゃなくって。

「なんで、卒業してまで私が梶原と会わなきゃいけないのよ。本当だったら……」

其処まで言って、口を噤んだ。それは、梶原から由佳に伝えられるべきことであって、加奈子が口を出していいことではない。

加奈ちゃん? と由佳が訝しんだが、加奈子は笑って首を振った。

「本当だったら、三年間、口も利かなかったかもしれない相手なのよ。卒業してまでもはいいわ」

加奈子はそう答えた。……何故か、由佳が寂しそうに笑った。


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