桜のつぼみが硬く結んだその先端を綻ばせている。空には雲がたなびき、少しぬるんだ風が加奈子の頬を撫でた。講堂で卒業式のリハーサルを終え、三年生は帰宅していった中、加奈子は久しぶりに生徒会室に来ていた。……もう籍を譲ってしまった部屋だけど、この部屋で梶原と色々な話をした。しんみりと三年間の思い出を思い出していると、ガラリと扉が開き、梶原が入って来た。

「あれっ、市原、来てたの?」
「梶原こそ、なんで来たのよ」

加奈子が振り向くと、梶原は照れたようにへへへ、と笑った。

「まあ明日で高校生終わりだし、積もる思い出に浸ろうかと思ってさ」
「そうね。明日で終わりだね……」

春の空気に溶かすように加奈子が言うと、梶原が、そうだな、と頷いた。

「契約も、……明日までだ……」
「そうだね……」

本当に梶原と関わってしまって、三年間色々あった。思い出せばキリがない。全ての始まりは一年のあの時からだった……。