──彼は目立つ人だった。

目立つといっても凄く背が高いとか、太ってるとか、そういう〝目立つ〟ではなくて。

高校生らしい黒い髪は普通でスタイルも平均なみ。みんなと同じの学校の制服を着ている彼は、柔らかい笑みをして友達同士で会話をしているどこにでもいる高校生なのに。

彼がどうして目立つのか。それは〝身につけているもの〟に関係していた。
普通の眼鏡じゃなくて、色がはいっている眼鏡。つまりはサングラス。
制服姿の高校生でも野外ではまだ分かる。だけど室内である教室の中でも体育館の中でも、彼はそのサングラスを外すことは無い。授業中でも黒板を見ながらずっとサングラスを付けている。まるで彼の体と一体化しているように。


(まき)くんの素顔、見たことある?」と聞かれれば、きっと誰もが顔をふる。
そんな私も慎くんの素顔を見たことがない。


1年生の頃は、どうしてサングラスをかけているんだろう?と思っていた。それでも3年生になればサングラスをかけている慎くんか当たり前になっていた。

だから3年生で初めて同じクラスになっても、「どうしてサングラスをかけてるの?」って、たいして仲良くなく関わりがない私が聞く訳でもなくて。

派手ではなく、茶色いサングラスでもなく、レンズは青い色だった。
高校3年生になるまでの2年間、私の考えた結果は色彩に関係しているのかなって思った。視覚に障害があり、人とは違う色に見えるからサングラスをかけているのだと。

それどもそれは違うと最近になって感じる。だって彼は運動をしないから。色が違って見えても、軽い運動はできるはずだから。
体育をいつも見学する慎くんがサングラスをかけている理由がほかにあると分かったけど。


その理由が気にならないって訳じゃないけど。やっぱりそこまで関わりが無いからか、凄く気になるって訳でもなくて。


毎日…サングラスをかけて、見えにくくないのかなぁと…。授業中、プリントを配る時、私の後ろの座席になっている慎くんの顔が見えるたびに、そんなどうでもいいことを考えていた。