わけがわからなかった。

あんなに取り乱していた人たちは、次の日もその次の日も、何事もなかったかのように日常を送っていた。

星が墜落?なんの映画?
誰に聞いても、返ってくるのはそんな答えばかり。


セナという名前を聞いて回っても、誰も、ほんの一人も、
その存在のことを、最初から知らなかった。


『───ねえ、スミはさ、もしも自分のいる星を消せるとしたらどうする?』

セナ。

きみは本当に、星を消したの?



『死ぬっていうか、無くなる。星の存在を消すのに、自分も巻き込まれるっていうのかな』



本当に、自分の存在も巻き込んで、初めから無かったことになったの?

どうして地球が守られるのに、きみひとりの存在が犠牲になったの?

本当はただみんなの記憶が消されているだけで、
地球でも宇宙でも、どこかに生きてたりするんじゃないの?


聞きたいこと、やまほどあるのに、
聞かせてくれる存在が、もうどこにも見当たらない。



「セナ……っ」



小さく声を紡いだ。
確かにかつて、この世に意味を持っていた文字の並びだ。

ばらしてしまえば何の変哲もない音なのに、きみを表す字列だと思うだけでキラキラと輝いて見えるようになった。