『───ねえ、スミはさ、もしも自分のいる星を消せるとしたらどうする?』


いつの日か、屋上で寝そべったセナが、ふいに尋ねてきた言葉だ。

私も私で、昔そんな感じの夢を見たことがあったし、そういう映画を見るのも好きだったから。ひとつの物語を楽しむみたいに、乗り気で話に食いついていた。


『それって、地球ってこと?』

『ううん、それだけじゃなくて。地球以外の星にいれば、その星が消せる。例えば地球に隕石みたいな星が迫っていたとして、それに触れさえすれば星の存在ごとなかったことにして消せるんだ』

『それ、でも、自分も死んじゃわない?』

『死ぬっていうか、無くなる。星の存在を消すのに、自分も巻き込まれるっていうのかな』

『えっ、命がけじゃん。それはやだ』

『……うん』



セナは、少し間を空けてから、ゆっくり頷いた。

何かに、安心するみたいに。
でも、どこか、寂しそうに。

“スミはそう言ってくれると思ってたよ”、って続けながら。


……あの時の、笑顔だ。
ふっと消えちゃいそうなくらい、強くて、優しくて、透明な笑い方。



「……どうしたんだろう、セナ」



夜、布団の中で呟いた。
天井をぼうっと眺めながら、セナの言葉や表情を思い出していく。

どうして、あんな星の話を急にしたんだろう。
セナは時折、何を考えているのか分からなくなることがある。

何か悩みがあるなら聞かせてほしい。
けど、すぐいつも通りの表情に戻るのは、聞いてほしくないってことなのかなとも思う。

難しい。どっちの気持ちを大事にしたらいいんだろう。

もうずっと一緒にいたような気がするのに、私はまだセナを分かれていないのかな。


考えあぐねながら、とりあえず眠ろうと、机の上の照明リモコンに手を伸ばす。


───と。

カシャン。

指先が別の何かに当たって、そのまま床に落ちた。

起き上がって目をやれば、小さな小瓶のストラップ。

セナとの帰り道、私が見つけて、一緒にガチャガチャを回した時のもの。


星型のストラップが欲しくて、何度も回して。
でもようやく引けた時、珍しくセナが、私の星柄の方を欲しがったんだ。

そんなにストラップとかを使うイメージが無かったから、不思議だったけど。

星をあげて、代わりにセナの引いた、多分ハズレのこの小瓶の方をもらった。


セナもまだ、持っていてくれているのかな。
もし、大事にしてくれていたら、すごく嬉しい。

……明日、聞いてみよう。
もし捨てちゃってたら、また別のおそろい、探してプレゼントしたらいいんだし。


そんなことを心内に決めて、眠りに就く。