安堵しながら、どこかがっかりもしながら、俺は再び寝始めたスミの頬をそっと親指で撫ぜてみた。


安心しきった、いつも以上にあどけない寝顔。

愛おしくて、好きだなって、もうそればっかこみ上げて来て、
ずっとこうやって穏やかに爆睡してほしいと思った。


ねえ、スミ、俺はね。

きみの居ない世界を、
そんな世界のために君が犠牲になる未来を、

どうしても受け入れたくなかったんだよ。



『死ぬっていうか、無くなる。星の存在を消すのに、自分も巻き込まれるっていうのかな』
『えっ、命がけじゃん!絶対やだ』



そうきみが言った時、俺は心底安心した。

けれどそれと同時に、馬鹿みたいに泣いてしまいそうになって、
だから必死に、いつも通りに笑って見せた。


地球のために命を懸けたくないはずのきみが、
俺を守るためなら『大丈夫』と微笑んで、犠牲になれてしまうんだと。



「セナ……」



……こんな風に、もう、名前を呼んでもらえないのは、
正直かなり、つらいけど。


でも俺は、きみが紡ぐその響きだけでもう、
十分すぎるくらいに生まれた意味を持てたんだよ。


そんなこと言ったら、大げさだって笑うかもしれないけどさ。



「……スミ」