セナ、と小さく声を紡いだ。
確かにかつて、この世に意味を持っていた文字の並びだ。

ばらしてしまえば何の変哲もない音なのに、きみを表す字列だと思うだけでキラキラと輝いて見えるようになった。

歩き古した通学路。
ガチャガチャで100円のストラップ。
連想するものが『きみ』になっただけで、いとおしくてたまらなくなる。

“好き”という言葉には、人それぞれたくさんの意味があるらしい。

私には、その定義が何かはわからないけれど、
例えばそれぞれの“好き”に、"特別レベル"みたいなものがついているとして。

君に抱くそれは、限りなく恋に近くて、どうしたって替えの効かないものだったと思う。


───スミはさ、もしも自分のいる星を消せるとしたら、どうする?


ねえ、あの時、きみはどんな気持ちで私にそう聞いたの。
あの瞬間、どんな未来を思い描いていたの?



「……セナ、」



きみを想えば、口は簡単にそう動く。

きみの温度も、名前を呼んで振り返るときの表情も、
いとも簡単に、触れられそうなほど、

目の奥に、焼き付いているというのに。