セナ、と小さく声を紡いだ。
確かにかつて、この世に意味を持っていた文字の並びだ。

ばらしてしまえば何の変哲もない音なのに、きみを表す字列だと思うだけでキラキラと輝いて見えるようになった。

歩き古した通学路も、ガチャガチャで300円のストラップも。

連想するものが『きみ』になっただけで、いとおしくてたまらなくなる。


その存在の定義が何かはわからないけれど、例えばそれぞれの感情の名前に"特別レベル"みたいなものがついているとしたら。

私が君に抱くそれは、きっと限りなく恋に近くて、そして替えの効かないものだったと思う。



「セナ、」



きみを想えば、口は簡単にそう動く。

きみの温度も、名前を呼んで振り返るときの表情も、
いとも簡単に、触れられそうなほど、

目の奥に、焼き付いているというのに。