教室の黒板には『焼きそば、コロッケ、アメリカンドッグ』と書かれている。学園祭での出し物が決まったようだ。
「うちのクラスだけで、そんなに出来るのー? 3種類って多過ぎじゃない?」
「アメリカンドックは市販のやつ買ってくれば揚げるだけだし」
「コロッケなんて作れるやついるのかー?」
「ワタシ作れるよー、形悪いけどー」
「バーカ、そんなんじゃ売り物にならねーだろーが」
教室では意見が飛び交っていた。
その白熱した意見を出し合う生徒たちを横目で見ながら、私は窓の外を見つめていた。
「ねぇねぇ杏! 今朝、井関先生と話してたねぇ」
ミカが内緒話をするように、小声で話しかけて来た。
「うん、手紙また持って来いって」
「良かったねぇ。井関先生とまた普通に話せるようになって」
「うん」
本当に……進展を望むことは出来ない。相手は先生だもん、わかっていること。でも、いいんだ。以前のように話せるようになれただけで、こんなにも嬉しい。