「Let’s talk under the roes bush―薔薇の下で話そう―。From the one that loves you―あなたを愛する者より―」

「薔薇の下で話そう? どういう意味? これは訳してもらってもチンプンカンプンだ」

 私はぷくぅと頬を膨らませた。

 くすっ。先生は私の顔を見て笑いながら手紙を訳し始めた。

「“薔薇の下で話そう”か。これは、古代ローマの古いことわざで、“秘密にしておこう”って意味だな」

「秘密にしておこう? 何をだろ? うーん、よくわからんなぁ。でも先生詳しいね。古代ローマのなんちゃらって」

「先生ですから」

 サラッと答えた。

「ぷっ、忘れてました」

「杏、おまえなぁ!」

 嬉しい。またこうやって話せるなんて。またこうやって「杏」て名前で呼んでもらえるなんて。

「手紙、ずいぶん貯まってるんだろ? また持ってこいよ」

「うん!」

 私は笑顔で返事をした。

 先生と話せただけで、こんなにも心が躍る。このままスキップでも逆立ちでも、なんでもできちゃいそうな気分だ。

 今日の私の一日は、きっといいものになる。そう感じた。