先生から目を逸らせない。誰も居なければ、先生は私を見つめてくれるの?

 先生と生徒、これは変えられない現実で。とても大きな壁で……。

 どんなに望んでも、越えられない、高い高い壁。

 それでもいいよ……。

 見つめてくれるだけで、先生を好きでいるチカラになる。

 自惚れでもいいよ。先生も私を好きだって、そう思わせて……。

 数秒間、見つめ合えた時間が止まったように、とても長く感じた。

 それだけで、こんなにも幸せだと実感出来る。心が喜んでいるのがはっきりと分かる。

 だけどその時、私は気付かずにいた。

 4階の3年生の教室前。その廊下から私と先生が見つめ合う姿を、じっと見ていた人……。

 入江先輩の、その熱く、重い視線に――――。