「リク? どうしたの?」
「……今は、杏ちゃんが彼女だと入江は言いふらしているらしい」
「そんなっ!」
私はその言葉に驚くことしかできなかった。
「杏は付き合うなんて言ってないし、好きな人が居るからって断ったんだよ? どうしたら入江先輩は理解してくれるわけ!?」
ミカはリク先輩に詰め寄った。
「聞いてる分じゃ、追いかけ回しても相手にしなきゃ飽きてすんなり離れるみたいだし、話せば解るやつだとは思うんだけど。本当に悪いと思ってるよ……。俺が余計な話持ってきて、入江を杏ちゃんに会わせたりしたから……」
「それは私も……杏に特別な人ができたらいいなぁって」
「わかってるって、2人が謝ることないよ。話して解ってもらえるなら、もう一度入江先輩に話してみるから」
「大丈夫?」
ミカが今にも泣きだしそうな顔で言った。
「うん、大丈夫だよ」
プルル。ポケットのスマホからメールの着信音が鳴った。
「お待たせ致しましたー」
ガチャン! 私は店員さんの声に驚いて、水の入ったグラスを倒してしまった。
「ごめんなさい!」
私は慌てて落ちそうになったグラスを手に取った。
「杏、大丈夫!? どうしたの!?」
ミカがおしぼりで、こぼれた水を急いで拭いた。
「ごめん、ミカ……」
鳴った着信、そこには……。
「これ……」
私はスマホをを2人に見せた。