本当に私宛の物なのか。違う人の下駄箱と間違えて入れたんじゃないか?

 でも、このマニアックな缶のアールグレイを飲んでいる生徒なんて、他に見たことないし。

 いやいや、まて。もしかしたら、この学校に私みたいなマニアックな奴が居るのかもしれない。

 色々考えても解決には至らず、私は頭を抱えていた。

「杏、どうしたのぉ?」

 まんまと1時間目をサボった私のもとに、ミカがやって来た。

 大石(おおいし) 美加(みか)
 中学3年間、ずっと同じクラスの親友。

 ラッキーなことに、高校入っても同じクラスになった。私より小さい身長と、クルクルのクセ毛の髪。私みたいに真っ黒なストレートとは違う。いかにもフワフワの可愛らしい女の子。

「私は杏みたいなストレートの髪に憧れちゃう~」と、いつも言ってくれる。

 お互い無い物ねだりだって笑ってるけど。

 さっきの出来事で頭を抱える私を見て、ミカが声をかけてきた。

 1時間目と2時間目の合間の休憩。教室は生徒たちの騒がしい声が飛び交っている。

 この空気、私はずっと好きになれなかった。それは今も昔も。

 他人(ひと)からいつも大人びていると言われてたけど、確かにそうかも。

 好きな芸能人や恋の話で騒ぐみんなが、私にはうるさく感じていた。大人びているっていうか、親からしたらクール過ぎて可愛げがないって言われる。

 この間テレビに出ていた、ナントカってコメンテーターが、学生のうちにしか出来ない事をしなさいって言ってた。勉強も恋も、その年でしか感じられない想いを感じなさい……と。

 私には理解出来ずにいた。

 みんなが楽しく笑いあって話す気持ちに共感出来なくて。なんとなく心がざわつくのを感じていた。だから今朝の出来事もこの騒がしい教室で話す気にはなれない……そう、思ってしまうんだ。

「ごめんミカ、昼休みに落ち着いて話すよ」

 私はそうミカに告げた。