「なんだぁ、そういうことだったんだー」

「だから毎日、先生のところに通ってたんだ」

 みんなはその話を聞いて、納得したようだった。

「ほら! わかったら教室戻れー。お前らもう、くだらないことで騒ぐなよー」

 彼女たちは先生に言われ、追い払われるようにそれぞれの教室に戻って行った。

「杏……」

 ミカの声が遠くに感じる……。

“英語に興味を持ってくれたら”

“くだらないこと”

“特別なわけじゃない”

 先生は私と一度も目を合わせることなく、教室に入って行った。

 心のどこかで、私は先生の特別なんじゃないかってそう思っていた。そう思いたかった……。

 先生の気持ちがわからないよ……。

 特別じゃないのに、私にキスしたの?

 先生はそんなこと、簡単に出来てしまう人なの?

 そう……思わせないでよ……先生……。

 あの言葉は、みんながいたからだって、特別じゃないなんて嘘だよって、そう言ってよ……。

 みんなの騒ぐ声。先生の声。私の名前を何度も呼ぶ、ミカの声。すべてが遠くに聞こえる。

 すべてが、意識が、薄れていくように感じた――。