「こら! 何やってるんだ!?」

 いつの間にチャイムが鳴ったのか、そこに井関先生が現れた。

「何をしているんだ!? お前らもいい加減にしろ!」

「だって井関先生……いつも篠田さんのこと特別扱いするから……」

「そんなこと無いだろ……」

 井関先生は、まったく……と言ったように、ため息混じりに話しだした。

「杏には毎日、誰かからの差し入れがあるそうなんだ」

「先生!」

 先生は私の言葉をさえぎるように、話を進めた。

「それには英語の手紙が付いていて、英語が読めない杏は、俺に訳してほしいと頼んできたんだ」

 どうして……どうして言ってしまうの……。

 例えみんなを静めるためだとしても、そのことは秘密にして欲しかったのに。

 みんなに何を言われても、そのことは話して欲しくなかったのに……。

「杏が英語に興味をもってくれればいいと思ったし、特別に何かを教えているわけじゃない」

 先生との2人だけの秘密だって思っていたのに――。